花田
ガチなメンヘラちゃん
つまらない花田の戯言日記①
2024/07/12 (金) 15:22:24
私が3才のとき、父が交通事故で崖からおちて消えた。
父の記憶なんてない。あったのは真っ白な着物で座敷わらしみたいな自分と兄たち、親族の着ていた白い服の葬儀。
モノクロの記憶は黒い喪服ではなく白い喪服を着ていることに違和感を感じさせた。
「そうだこれは夢なんだ」
たぶん父はどこかで生きていて私は存在しない葬儀の夢をみたのだ、と小6になるまで思い込んでいた。
石川県の珠洲市では白い服をきて葬儀に参列する習慣があるとインターネットで検索できるようになった頃、私は中学に行くための奨学金を借りる用紙に『父、交通事故で死亡』と記入することとなった。
母に自分で書きないと言われ、母の言葉を書類に書き映した。
『父、死亡』
「…なんだ…どこかで生きてるなんてほんとに思いながら9年も暮らしてたんだな、私ばかだなぁ…」
事実にがっかりするより、自分の能天気具合を自覚して笑えてくる。父の記憶がない私にとっては悲しくも淋しくもない笑えるくらいの出来事だった。
「母も兄たちも父のこと話さないようにしてたんだなぁ…」
ある日突然抜け落ちた家族の大きな柱のことを、私が12才になる9年もの間ずっと黙るしかなかったのか…と思うと少し母と兄がかわいそうだった。
車で崖から転落、通りかかったトラックに事故車両を発見されるも、父の消息は不明。遺体が見つかったのは何ヶ月もあとだった。
当時9才だった兄は、帰らない父に対し自分たちは捨てられたのだと怒り弟妹が父の話をすると癇癪を起こした。私には兄が怒っていた記憶はないが『遺体がない』『帰ってこない』というフレーズをどこか脳の片隅に見つけていた。
だから、あの葬儀が夢じゃなかったのだとしても中身のない棺桶を燃やしたのではないか、生きて父が現れてこんな母と兄を救ってくれるんじゃないか…と勝手に妄想していたのだ。幼い私にとってもこれがささやかな現実逃避だったのだろう。
そんな私は小学1年から学校に行かず、勉強もしないで兄たちと毎日ちらかったアパートの部屋で遊んで6年も過ごし、12才でようやくその現実の危うさに慌てふためいた。
父の死亡理由とともに、「20歳から100万を月々5000円づつ返済します」という奨学生の書類にサインし、地元から脱出して私立中学に通う人生を始めるしか6年も堕落した人生を歩んだ自分には打つ手がなかった。
中学生ですでに借金100万てな。すげえな、私。
父を失った母が本心を隠して笑っていたように、私も母の前では「不登校6年なんて大した事ないのぉ」って笑いながら、もうすでにこの人生は真っ暗な地獄だった。
私はなにか悪いことをしたのかなんて考えることがないくらいはじめから。
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