【女子大生コラム】女性のウワキ、男性のウワキ
新人キャバ嬢 VS へっぽこ中年詐欺師
見た目は普通の中年男性だった。こう言っては悪いが、冴えない感じの男性だ。
「俺、普段は銀座とかで飲むんだけど、今日はこっちの方まで来てみた」
当時わたしは右も左もわからない十代である。そんなことを言うわりには彼の服がユニクロなことにも、腕時計はGショックなことにも、何も気づいていなかった新人キャバ嬢であった。
「えっ、すごーい。お金持ちなんですね」
その割にはテーブルにあったのは鏡月の水割りのみだったが。
彼の話を露ほども疑わず、ふんふんと熱心に話を聞くわたし。しばらく話し込むと、彼は言った。
「来週、同伴しよう」
その日はワンセットで彼は帰って行った。彼の話をすべて鵜呑みにしていたわたしは、なんてお金持ちでステキな人なのだろうと思ってしまったのである。冴えない感じの第一印象を持ってしまったことを心の中で謝るくらいに。
「俺、投資家なんだ。歌舞伎町界隈の人間はみんな俺に頭が上がらないよ。だから、今日はどうしても来てくださいって言われて店長の顔を立てるために来たんだ」
…今もし席についたのなら、笑い飛ばして待機席でネタにするだろう。
すっかり彼を信じ込んだわたしは、いろいろな相談をするようになった。どうしたら指名が取れるのか。どうしたら会話が弾むのか。当時のわたしにはキャバクラの世界は未知のことばかりだったのだ。
彼はいつもウィルコムで電話をしていた。今となってはわざとらしいし、本当に会話していたのかも謎である。そういう演出だったのかもしれない。
当時わたしには、メールを連打してきたり無言電話をしてくる客がいた。店でも有名な粘着質の客で、ここのところフリーに落ち着いていたのだが今度はわたしがターゲットになったのだ。何気なくそのことを彼に相談してみた。
「それはマズイよ。ストーカーじゃないか。放っておいたらますますひどくなる」
彼はリアルさを出そうとしてか、ストーカー殺人などの話もし始めた。キャバクラについて無知だったわたしはすっかり怖くなってしまう。
「どうしたらいいかな?」
「大丈夫。僕が弁護士を立ててあげる」
「え? 弁護士って…50万ぐらいかかるんじゃないの?」
「心配することないよ。大丈夫」
彼はそう言ってどこかに電話をかけはじめた。
「はい、もしもし? …はい。そう、依頼したいことがありまして。僕の知り合いの女の子が、ストーカー被害に遭ってるんですよ…」
目くばせをして、席を立ち彼は電話で簡単な話をする。さすがにこれにはわたしもおかしいと思い始めた。実際そんな深刻なストーカー被害が出ているわけでもないのに。しかも、警察でもなくいきなり弁護士に相談して意味があるのだろうか?
新人キャバ嬢とへっぽこ詐欺師の、仁義なき闘い。
そんなバカな。わたしは彼の電話を冷めた目で見ていた。
急にわたしは我に返る。そういえばこの人、いつもワンセットで帰るしドリンクだって飲ませてくれても一杯だけだったよね? 普段銀座で飲むようなお金持ちの割には服だってなんかダサいし…。急に醒める醒める。
この人、もしかして…。
「やあ、今終わったよ」
彼が笑顔で帰ってきた。なんだその爽やかな笑顔は。
「今の、誰?」
「知り合いの弁護士さんなんだ」
そう言いながら彼は履歴を見せてきた。そこには、弁護士・医者・国会議員とそのままの名前で登録された着歴が残っている。明らかにおかしいだろ。なんでお前が弁護士や医者や国会議員と日常的に電話するんだよ。ちょっと面白くなったわたしは騙されたふりをすることにした。
「えーっ、すごーい。そんなに偉い人たちともお仕事してるの?」
「そう。投資してるんだ。政治家だって俺に頭が上がらないよ。週末の夜には芸者がいるような料亭に招いてくれるんだ。まぁ、面倒だから行かないけど」
いよいよ雲行きが怪しくなってきた。わたしは今までの笑顔を崩さず頷く。
「じゃあ、弁護士さんと進展があったら教えるよ」
数日後、早くも彼は尻尾を出すことになる。
火切りは深夜のメールだった。
”弁護士費用なんだけど…ざっと100万ぐらいかかるって言われて。半額は俺が出すから、あと半額ぐらい出せないかな?”
キタコレ。なんだこいつ。キャバ嬢相手に詐欺でもしようと思ったのだろうか。
“そんなお金、ないよ…。しかもどういう契約かよくわからないし”
“俺を信じて任せてくれてるんじゃなかったの? 君は俺の彼女でしょう”
意味がわからない。ここまでくるともうネタである。
“じゃあわかった。大丈夫。弁護士さんと新幹線費用、一万円でもいいから出せないかな? これは君の気持ちの問題だよ”
わたしは黙って携帯を閉じた。
それから数か月後、彼が指名なしのフリーで店に来ているのを見かけた。目が合ったが、そらして無視をする。いったい、何をしに来たのだろう。新しいキャストを騙しにでも来たのだろうか。席についた友人のキャストに尋ねると、特にそういう話は何もでなかったらしい。あれから彼の姿を見かけることはなかった。新人キャバ嬢時代の変な客ベスト3には入る客である。
文|R22(現役女子大生ライター)
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